
酒類販売業免許は譲渡ができるか?
最終更新日:2025年2月23日 行政書士 勝山 兼年
法人の酒類販売業免許を譲渡する場合
酒類販売業免許は人と販売場(店舗、事務所等)がセットでなされるものです。相続以外では名義を変更したり、第三者に売却や譲渡したりすることは認められていません。ましてや名義貸しなどは法令違反となり発覚すれば免許の取消事由となる恐れがあります。例え、店舗を売却する場合でも、新規に免許申請しなければならず、新しい経営者が免許を引き継ぐことはできません。
酒類販売業免許は特定の個人や法人の適格性(人的要件、経済的要件、場所的要件)を審査を経て交付されるもので、新しい事業者が酒税法の要件を満たしているかを改めて審査する必要があのです。
しかし、個人事業者が法人成りをすることや、法人が合併、事業分割・分離などした新設法人が免許を承継する場合は、免許の交付と同時に既存の免許者が取消申請することで、実務上営業を休まずにできます。

法人成り
個人で免許の交付をうけて酒類販売業を営んでいる者が代表者となり法人を設立し、その法人に酒類販売業を引き継がせたい場合について、同一の販売場で免許を取得するとしても、法人として新規に酒類販売業免許を取得しなければなりません。通常の申請より提出書類の一部は緩和されますが、免許の要件は同じです。

個人成り
免許の交付をうけて酒類販売業を営んでいる法人が解散し、代表者が個人として酒類販売業を引き継ぐ場合は、同一の販売場で免許を取得するとしても、個人として新規に酒類販売業免許を取得しなければなりません。通常の申請より提出書類の一部は緩和されますが、免許の要件は同じです。

相続
酒類販売業を個人の免許で営業していた者が、亡くなった場合は三親等内の親族であれば相続のうえ免許の譲渡が認められています。申告をするだけで、新規の免許交付申請をする必要はございません。

会社の合併
酒類販売業免許を取得している法人が他の法人に吸収合併される場合、消滅する免許取得法人のそれまと同一の販売場での営業であっても存続法人が新規に免許を取得しなければなりません。一部提出書類は緩和されますが、免許取得においての人的要件、経営基礎要件などは同様にあります。また、合併時の在庫についての報告や消滅法人の免許取消申請を同時にしなければなりません。

会社の分割
酒類販売業免許を取得している法人が、分割した場合は酒類販売業を承継する新設法人はそれまでと同一の販売場での営業であっても新規に免許を取得しなければなりません。一部提出書類は緩和されますが、免許取得においての人的要件などは同様にあります。法人は設立間もないために決算書の提出は不要となりますが資本金は酒類販売業を営むに相応しい額ではなりません。また、消滅法人の免許取消申請を同時にしなければなりません。

酒類販売業免許取得事例
- 法人代表者の変更
平成元年以前から、酒類販売を営んでいたX社に、通販業務を専業としているZ社が会社の買収を提案してきました。X社の代表者は高齢で、後継者もおらず廃業も考えていましたのでZ社の提案を受け入れました。X社の代表者はZ社にX社の株式全部を相当額で譲渡しました。Z社は社員数人をX社の取締役として就任させ、名称と本店所在地の変更登記もしました。
法務局での登記変更を済ませた後、X社販売場所在地の税務署に異動申告の申出を行いました。また、X社の販売場をZ社の社屋と同じ建物内に移転し、移転許可申請もしました。税務署より移転が許可された後、旧X社は酒類の通信販売を始めました。
- 原則、酒類販売業免許の譲渡は認められていない。
- 同一の場所で免許申請する場合は一部書類が省略される。
- 消滅法人免許取消申請をしなくてはならない。