ウイスキーを販売する方法
最終更新日:2024年9月8日 行政書士 勝山 兼年
ウイスキーを販売するには酒類販売業免許が必要です。
ウイスキーを販売するための酒類販売業免許取得には酒税法に基づき、経営的、場所的、人的な要件を満たす必要があります。また、海外産ウイスキーの販売、通信販売や卸売にもそれぞれ異なる種類の免許が必要となります。さらに、近年人気を博しているジャパニーズウイスキーの販売や、買取リサイクルショップを通じた販売にも独自の規定があり、手続きについて詳細に解説します。
許可・免許 | 酒類販売業免許 |
法律 | 酒税法 |
所管官庁 | 国税庁 |
申請窓口 | 販売場住所地管轄の税務署 |
免許要件 | 経営基礎、人、場所など |
海外産のウイスキーを販売するための免許は!?
海外産ウイスキーを小売販売するための免許
海外産のウイスキーを店頭販売または酒類販売場と同一都道府県内に配達するための免許は「一般酒類小売業免許」です。酒類販売場から都道府県を超えて消費者等に通信販売するのであれば「通信販売酒類小売業免許」となります。
- 酒類販売場とは
酒類販売においての受注、発注を行う場所です。酒類を保管するしないには関わりません。他の事業体と明確に区分されている必要があり、販売場には帳簿を備え付ける義務があります。また、酒類を保管するだけの場所を蔵置所といいます。
製造者からの課税移出数量証明書は必要か?
製造メーカーの規模を証明するもの
国産酒類を通信販売するためには、免許申請者あてに製造者が品目ごとに1会計年度における移出数量が3,000キロリットル未満である事の証明書の提出が必須です。これは、大手メーカーの酒類を通信販売することを禁止しているからであり、通信販売ができるのは小規模メーカー製品に限られているからです。ただし、海外産酒類についてはそのような制限はないので、海外産ウイスキーのみを通信販売するのであれが課税移出数量証明書の提出は求められません。
海外産の卸販売では自己輸入と他社輸入したもので免許は異なる!
海外産ウイスキーを卸販売するための免許
自己が輸入した酒類を卸売りするには「輸出入酒類卸売業免許」となります。他者が輸入した酒類を国内で仕入れた場合の卸売りには「洋酒卸売業免許」でなければなりません。「洋酒卸売業免許」では自己が輸入したものでも卸売りができます。ただし、「洋酒卸売業免許」で取扱えるのはウィスキーなどの洋酒であって、韓国産の焼酎などは扱えないのでご注意ください。
免許 | 輸出入酒類卸売業免許 | 洋酒卸売業免許 |
自己が輸入したウィスキー | 〇 | 〇 |
他者が輸入したウィスキー | × | 〇 |
自己が輸入した洋酒以外のもの | 〇 | × |
ジャパニーズウィスキーを卸売したい。
近年、ジャパン―ズウイスキーの人気が高まり、「山﨑」や「響」「竹鶴」のブランド年代物が1本数十万円もの高値で取引されています。買取リサイクルショップなどは高値で買取してくれるなど、ジャパニーズウィスキーの市場は好況を見せています。これは中国などで飲用だけでなく長期保存することで価格が上がることを見越した資産として取引されている面もあります。
大手メーカーの製品は同一都道府県を超えての通信販売はできない!
ジャパン―ズウイスキーの小売免許
店頭での販売は酒類販売場と同一都道府県内に配達するのであれば上記の海外産ウィスキーと同様一般酒類小売業免許です。小規模メーカーの製品を通信販売するのであれば「通信販売酒類小売業免許」となりますが、「サントリー」や「ニッカ」などの大手メーカー品はそもそも酒類販売場から都道府県を超えて消費者等に通信販売することはできません。
販売先相手 | 店頭販売、同一都道府県内への配達 | 同一都道府県外への通信販売 |
課税移出数量3,000kl未満の小規模メーカー品 | 〇 | 〇 |
課税移出数量3,000kl超の大手メーカー品 | 〇 | × |
海外産 | 〇 | 〇 |
国産を日本国内で卸販売する免許には販売経験が必要!!
ジャパン―ズウイスキーの卸販売免許
買取リサイクルショップなどが買取ったウィスキーを海外に販売する場合は「輸出入酒類卸売業免許」が必要です。一方、国内で他の酒類販売免許業者に卸販売するのであれば「洋酒卸売業免許」、「店頭販売酒類卸売業免許」が必要です。どちらの免許も3年以上の酒類販売業等の経験を求められますので、小売業免許等での経験がない者には取得ができません。
- 店頭販売酒類卸売業免許とは
自己の会員である酒類販売業者に対し店頭において酒類を直 接引き渡し、当該酒類を会員が持ち帰る方法により卸売することができる酒類卸売業免許をいいます。
免許 | 小売業免許 | 輸出入酒類卸売業免許 | 洋酒卸売業免許 店頭販売酒類卸売業免許 |
酒類の販売経験等 | 酒類販売管理研修受講で可 | 不要 | 3年以上 |
買取ショップが国内で卸販売するまでには!?
買取リサイクルショップのジャパニーズウイスキー販売
買取リサイクルショップが酒類販売業免許を取得するまで、酒類の販売経験等はなくまた決まった仕入れ先もありませんので、一から実績を積み上げていくしかありません。先ず小売業免許を取得し買取ったウイスキーのうち海外産はオークションへの出品、国産は店頭販売や近隣の飲食店への配送販売で実績を積み上げます。免許取得後3年経過後に「洋酒卸売業免許」などを取得すれば、海外産国産を問わず同業の酒類販売免許業者への卸販売ができるようになります。
ウイスキーを取扱うための免許取得事例
- 国産ウイスキーの販路を広げる。
買取リサイクルショップを運営するP社は、通信販売酒類小売業免許を持って買取った海外産酒類をネットオークションに出品販売していました。国産高級ウイスキーを専門に扱うE社から、国産高級ウイスキーを買取たいとの申出あり、P社は業務拡大のために、提案を承諾しました。E社の説明ではP社は「洋酒卸売業免許」を取得する必要があるとのことでした。幸いあP社は「通信販売酒類小売業免許」を取得して3年以上経過していたため、経験要件を満たしています。一方、販売場所在地内の都道府県内であれば国産ウイスキーをネットオークションに出品することも可能だと知り、そのためには「一般酒類小売業免許」の取得が必要であるとのことでした。そして、「洋酒卸売業免許」と「一般酒類小売業免許」の取得のための条件緩和の申出をこない、無事、免許が交付されました。
- ウィスキーの販売には酒類販売業免許が必要!
- 国内卸販売免許には3年以上の酒類販売経験が求められる!
- 国産大手メーカー品は通信販売できない。