既存法人での酒販免許取得の方法

最終更新日:2024年9月8日   行政書士 勝山 兼年





法人が酒類販売業免許を取得する場合の解説。

酒類販売業免許の要件

 既存法人での酒類免許取得には決算内容の審査や販売場の要件など、注意すべき点がいくつかあります。酒税法上の販売免許の要件は「人的要件」、「場所的要件」、「経営基礎要件」、「需給調整要件」です。酒類販売業免許取得について代行を依頼される場合は実務的には下記のことを確認させていただきます。

  • 事業目的
  • 決算内容
  • 建物賃貸借契約
  • 仕入先、販売先の確保
  • 役員の経歴

 上記の事項を確認するため、下記の書類をご用意頂きます。

  • 履歴事項全部証明書(会社登記簿謄本)
  • 決算書(貸借対照表、損益計算書、販売費・一般管理費内訳)直近三期分コピー
  • 販売場(事務所)の建物賃貸借契約書コピー

 酒類販売業免許の要件に基づき、免許が取得できのか!?取得するための修正すべきポイントについて説明させていただきます。また、直ぐには免許が取得できない場合もありますので、将来の免許取得についてアドバイスさせていただきます。



事業目的に「酒類の販売」にかかわる項目が必須!!

定款の事業目的

 履歴事項全部証明書(会社登記簿謄本)の「目的」欄に「酒類の販売」などの項目があることが必須です。ワインやウイスキーなど品目を限定した内容である場合は、その品目を扱う限定免許であれば取得できます。
 酒類の販売に関する項目が無ければ、定款変更と法務局での登記変更を行ってもらう必要があります。この場合は下記の文言を参考にしてください。

  追加する定款の事業目的「酒類の小売、卸売及び輸出入」





 酒類販売業免許には業態により複数の種類があります。大きく分けて小売と卸売です。また、小売は店頭販売と通信販売に別れ、卸売は海外仕入れや国内仕入れ、外国への輸出などで免許が分かれるのです。何度も事業目的の変更をするのは合理的ではありませんので、将来の事業拡大を見越して幅広い内容にすることをお勧めします。


直近三期分の決算内容が審査の対象!

決算の内容

 酒税法10条10号の経営基礎要件において「その経営の基礎が薄弱であると認められる場合は該当しないこと」とあり、該当しないことを決算書などで証明しなくてはなりません。具体的な内容は

  • ハ 最終事業年度における確定した決算に基づく貸借対照表の繰越損失が資本等の額(注)を上回っている場合
  • ニ 最終事業年度以前3事業年度の全ての事業年度において資本等の額(注)の 20%を超える額の欠損を生じている場合

 決算の内容が上記にあてはまる場合は欠格要件として免許は取得できません。資本金を増資したり決算期を早めるなどの対応で免許取得が可能となる場合があります。



建物所有者からの使用承諾が必須!

販売場の使用権原

 酒税法10条10号の経営基礎要件において明確に区分された販売場を設けることとなっております。販売場とは店頭で酒類と代金を受け渡す場所以外に、電話やメールなどで受発注のみ行う事務所にも当てはまります。この販売場は免許申請者が酒類販売場として使用することを所有者より承諾されていることが必須です。建物賃貸借契約書にその旨記載されていれば問題ありません。
  他の会社と同居していたり、賃借人からの又貸しの場合であっても免許は認められますが、いずれの場合も建物所有者が免許申請者に直接使用を承諾する旨の書面の提出が必須です。
 自己所有の場合は土地建物の登記事項証明書で所有者と申請人が同一であるとわかれば承諾書の提出は不要です。ただし、所有者が法人の代表者個人の場合は代表者と法人との賃貸借契約書の提出が必要となります。



具体的な事業計画を客観的に証明する必要がある。

仕入先、販売先の確保

 卸売業免許の場合、具体的な事業計画に対しての疎明資料として仕入先及び販売先からの「取引承諾書」の提出を求められます。既に「売買契約書」や「売買についての覚書」などを取り交わしていれば、別途に承諾書などは必要ありません。
 小売業免許の場合でも仕入先名称を明示せねばならず、また、不特定多数の者の販売ではなく、特定に者に配達専門で酒類販売する場合は販売先名称も明示しなくてはなりません。



免許により求められる経験が異なる!?

取締役の経験

 経験その他から判断し「酒類販売業を経営するに十分な知識及び能力を有する」ことが必須です。取締役の経験とは免許の種類のより異なります。


免許の種類 経験の内容業免許
一般酒類小売業免許
通信販売酒類小売業免許
3年以上酒類販売業に従事
3年以上継続して調味食品の販売業を経営に従事
全酒類卸売業免許
ビール卸売業免許
10年以上酒類販売業に従事
5年以上酒類販売業を経営に従事
洋酒卸売業免許 3年以上酒類販売業に従事
3年以上継続して調味食品の販売業を経営に従事
上記2項の合算期間が3年以上
輸出入酒類卸売業免許件 酒類の販売経験などの要件は無し
貿易実務の経験必要
免許ごとの取締役の経験

※小売業免許においては管理者の他、取締役の一人が酒類販売管理研修を受講することで十分な知識及び能力を有すると見なされます。




まとめポイント
  • 事業目的には「酒類の販売」の項目必須!
  • 決算内容が重要。
  • 所有者からの販売場使用承諾が必須!
  • 取引先を確保しないと免許が取れない。
  • 免許の種類ごとに経験内容が異なる。



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